ヒノキの森の案内人のページ

『資本論』に学びながら、世の中の矛盾について考えたことをつづっていきます。

汚染水を海に流した政府と東京電力に抗議する!

   東京電力は政府の方針に基づき、本日午後1時過ぎに、福島第一原発事故の〝放射性汚染水〟を海に流しました。わたしは、国内外の多くの反対を押し切って行われた、汚染水の海への放流に対して、断固抗議します。

 政府および東電は、直ちに、放射性汚染水の海洋投棄を止めよ!
 わたしがなぜ汚染水を海に流すことに反対するのかについては、わたしのブログ(「〝放射性汚染水〟を海に流してはいけない!」(2023.04.26))を読んでもらえればわかります。

 ここでは、わたしが感動した、福島県新地町の漁師の小野春雄さんの発言(※7月23日、海洋放出に反対する市民団体と原子力規制庁・東電との交渉の時のもの)を紹介します。この発言内容は、元朝日新聞記者でフリーライターの牧内昇平さんのブログから一部引用させてもらいました。

 「あんたたちはいいですよ。30年後、40年後、どうなっているか分からないんだから。自分たちは異動もできるし、辞めることもできるけども。事業者とかここにいる皆さんは、福島県を捨てることができないんですよ。漁業者は特別、海を離れることができないんですよ。仕事だから。現実これだけの肉体的苦痛、精神的苦痛。岸田総理大臣に聞いてもらいたいですよ。本当に。われわれの声を。
 ということですから、ぜーったいに海に流さないように、お願い、お願いをします。ほーんとに。お願いしかないです。」
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 「前回の集まり(7月18日に行われた相馬双葉漁協と政府との意見交換会)で私が不思議に思ったのは、トリチウム水のタンクが満杯になっていると。そしてトリチウムってのは何年かたてばだんだん減っていくと。ほんだったら流す必要ないでしょ! ……」
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 「われわれは一生懸命になって、死に物狂いではたらいてんですよ。今後のためにと思って。こんな暑いのに。漁師は命がけでがんばってんですよ。倒れた人だっているんですから。漁師は魚を獲りたかったら本気になるんですよ。日射病で倒れた人もいるんですよ。3年前に亡くなっている人もいるんですよ。そういうふうに一生懸命仕事してるんですよ。われわれは。生活のために。今後のために。未来を夢見て。
 これを流したら、未来がないでしょ? どうするんですか! 我々にやめろってことですよ。海に流すっつうのは。我々を守ってくださいよ。いちばん守るべきはわれわれでしょ? 方法がないんだったら、わたしだって理解しますよ。方法があるでしょ? いろいろな方法、おれは何度も言ってるでしょ。」
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 「いちばん大事なのは、「夏頃」っつうけど、いまは夏でしょ? いま春? 冬? 小学生も夏休み入ったでしょ? この前も官房長官が「夏」って限定してたけど、なんで夏って限定するんですか? われわれにとって一番大事なのは消費者なんですよ。消費者が納得するなら、われわれは文句言わないですから。関係者ってわれわればっかでないですよ。われわれは獲ってくるだけ。消費者のかたが福島県の魚はいらないと言ったら、われわれ獲る必要なくなるでしょ。関係者ってのは、海外も含めて消費者でしょ。みんなが納得して流せば福島県の魚だって買うんですよ。納得してなけりゃ買わないでしょ。
 国のトップの官房長官が夏頃だなんて、なんで限定するんですか? いちばん肝心なのは、一度立ち止まって、皆さんの話を聞くことでしょ。……現場の声わかんないでしょ。岸田総理大臣は。」
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 「私はずっと魚を獲ってきたんですよ。海については100%答えられるけっど、放射能については答えることできないですよ。私はお願いしてるんだから。お願いしてるんだから、どうぞ。海は、一回汚せば、除染はできないし、我々だけじゃなくて子子孫孫に多大な迷惑がかかるんだから。ほんとに。隣の宮城県だって、もう風評被害が始まってるっていうんだから。実害ですよ。」
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 「ほんとにお願いしたいのは、ね、岸田さんが「待ったなし」って。なにが「待ったなし」なんだか。「待った」はあるんです。いっかいほんとに立ち止まって、冷静に考えれば、子どもでもわかるんです。答えが。
 流せば、福島県がなくなる可能性もありますよ。福島県を捨てるんですか?
 自分は放射能を知らなかった。これはね、自分も悪かった。ただ、いま流せば、またとんでもない事態が起きますよ。これ、あわてちゃだめですよ。冷静に考えて、いちど立ち止まって、「待ったなし」なんて、岸田総理は「私の判断で」なんて言わないで。冷静に考えれば子どもでも分かるんです。海に流しちゃだめだっつうことは。
 どうか、お願いします。海に流さないでください。」
 
 わたしは、牧内さんのブログに出会うまでは、小野さんを知りませんでした。この小野さんの発言は、わたしが考えてきたことや思いと重なり、全くその通りだ、と思います。そのため、長くなりましたが、小野さんの発言を引用しました。(2023.08.24)

 

〔追記〕
 汚染水の海洋放出を新聞6社は、8月23日の社説でどのように伝えたのでしょうか?
 ◆海洋放出に「理解」を示した3社
 〇読売新聞 「放出を引き延ばす意味は薄く、迅速に対応したのは適切である」
 〇産経新聞 「政府は海洋放出を東電に丸投げすることなく、政府の責任で完遂して  もらいたい」
 〇日経新聞 「漁業者の反対はあるが、福島の復興や廃炉を進めるには政治判断が必要だった。岸田文雄首相の判断を評価したい」
 ◆海洋放出に「批判的」な3社
 〇朝日新聞 「政府と東電は内外での説明と対話を尽くしつつ、安全確保や風評被害対策に重い責任を負わなければならない」
 〇毎日新聞 「誠意ある対応を尽くしたとは言いがたい」「処理水は今も日々90トンずつ増えており、このままでは廃炉作業の支障になりかねないのは事実だ。政府・東電には、計画を安全に遂行する重い責任がある」
 ※朝日新聞毎日新聞も、汚染水の海洋放出については〝必要〟としたうえで、「責任」という言葉を政府・東電にぶつけているだけです。両紙とも、海洋放出に中止を求めてはいません。
 〇東京新聞 「約束を反故(ほご)にしての放出開始。いくら首相が「責任を
持つ」と繰り返しても、にわかに信じられるものではないだろう。海洋放出の
実施については、まだまだ説明と検討が必要だということだ」「これほどの難
題を抱えつつ、あたかも別問題であるかのように、政府が「原発復権」に舵(か
じ)を切るのも全く筋が通らない。」「拙速な放出開始は将来にさらなる禍根を
残す」
 ※東京新聞は、ALPS処理水を「」付きで、「処理水」と表現しています。海洋放出を中止せよ! という表現はしていませんが、反対姿勢を鮮明にしているといえます。

 さて、「批判的」な論調の中での3紙の違いに注意が必要かと思いますので、少々述べます。朝日新聞毎日新聞は、一見、政府や東電に対して批判的に論じているかのようですが、海洋放出の必要性を認めているということは、結局、政府・東電による汚染水の海洋放出を許している、と言えると思います。さらに、政府と東電に「責任」を言うことにより、後押しをしている、とさえいえると思います。