ヒノキの森の案内人のページ

『資本論』に学びながら、世の中の矛盾について考えたことをつづっていきます。

「労使自治」に魂を吸い取られた「連合」指導部

 


 「連合」指導部は、経団連の『労使自治を軸とした労働法制に関する提言』(以下、『提言』)に対して、翌1月17日に事務局長談話を発表しました。
 この談話で、清水事務局長は、「提言は、労働法制について、労働者の健康確保等にかかわる最低限のルールとし、細部は労使自治に委ねるなど時代にあった見直しが必要としている」とし、『提言』の特徴をよく捉えている、と思います。
 しかし、「労使自治の尊重という名の下に労働法制の規制緩和を行うことは許されるものではない」と、わけのわからないことを言っているのです。これはいったい、どういうことなのでしょうか?
 そもそも、経団連が『提言』を公表したのはなぜなのでしょうか。

経団連が『提言』を公表した理由
 日本の大企業で構成される経団連は、『提言』を公表した理由を次のように述べています。
「現在、労働者の価値観や働き方の多様化、人口減少による労働市場の人材獲 得競争の激化、DXの進展等による事業内容の変化等、企業と労働者は大きな 転換点におかれている。 こうした中、日本が高い産業競争力を維持し続けるためには、労働者の多様なニーズをくみ取り、労使双方にとってよりよい働き方を探ることが不可欠で ある。
しかし、現行の労働基準法は、画一的な規制であり、職場実態をよく知る労使が多様な働き方を実現していくことが難しくなっている。また、近年、労働法全般が詳細・複雑化しており、当事者である労使双方が正しく理解したり、活用したりすることの妨げになっていると言わざるを得ない。さらに、労働組合の組織率が低下していることもあり、自社にとっての望ましい職場環境のあり方を個別企業の労使が話し合い決定するという、日本企業の強みともいえる労使自治を発揮できる場面が縮小している。」
つまり、経団連は、現行の労働法制が最大のネックとなって、日本企業の産業競争力を維持し、高めることができなくなっている、と言いたいわけです。このことを解決するために、企業ごとに労働条件などを労使で納得ずくであるとし、雇った労働者は無期であろうが有期であろうが、資本家の思うがままに生産性向上に資してくれる―― そういう労使関係を保障する・「労働法制」に変えたいわけです。乾いた雑巾のような労働者をまだ絞れるだろうと、今でも労働者保護に関して不十分な労働法制であるにもかかわらず、労働者を守る部分を完全になくしたい、というわけです。とんでもないことです。許せません!

「労使自治」にしがみ付く「連合」指導部
 経団連の『提言』は、「労使自治を軸として」と表現しています。
 『提言』では、生産性の改善・向上にむけた「エンゲージメント向上のための」労使コミュニケーションを密にしていく―― そのために「労使自治を軸として」という表現を使っているのだ、と思います。

 ※「エンゲージメント」という概念は経団連の独特なもので、2023年版『経営労働政策特別委員会報告』では、「働き手にとって組織目標の達成と自らの成長の方向性が一致し、『働きがい』や『働きやすさ』を感じられる職場環境の中で、組織や仕事に主体的に貢献する意欲や姿勢を表す概念」、と整理されています。
 
 これを受けて「連合」事務局長は、「労使自治の尊重」と肯定しています。
「良好で安定的な労使関係の下、自社における様々な課題を共有しながら、働き手の成長につながる総合的な処遇改善・人材育成による『人への投資』促進のあり方などを含め、『経営のパートナー』である「連合」として」資本と労使協議をしていく、という意味で「労使自治の尊重」と言っているのです。つまり、「連合」指導部は、全面的に経団連に協力していく、と宣言しているわけです。

泣き言をいう「連合」指導部
 経団連は、「連合」の組織率が16%と低下しているのをみて〝使えない!〝 と判断し、80%以上の未組織労働者を、労働三法でまがりなりにも法的に保護されている労働組合ではなく、「労使協創協議制」に組織化しようと考えています。ある意味、産業報国会化には、「連合」は用をなさない、と経団連はみなしているのではないでしょうか。
 そのことを察知した「連合」指導部が、「労使自治」を持ち上げ、「尊重」するとし、〝お見捨てなく〝と資本にすがっているように思えます。

 「労働基準法の基本原則などを堅持しながら、労働者の多様な働き方を実現することは労使協議等を通じて今でも可能であり、強行法規としての労働時間規制のあり方を見直す必要はない。」などと事務局長は言います。
 しかし、強行法規などと言いますが、大企業も違反をしているところは数多いはずです。それに、労基法の残業時間の上限だって、過労死スレスレです。
 ―― にもかかわらず、「見直す必要はない」だと! 
われわれ労働者は、団結して、連帯して、資本と対峙し、誇りをもって、より良い労働条件、賃金を勝ち取っていくのだ!