岸田政権は、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出(8月24日から)を巡り、反対世論などの動向の沈静化に本腰を入れています。一部野党議員らの海洋放出批判を「理不尽に反発する中国に味方するのか!」(政権関係者)とけん制したり。中国への警戒感を強める世論を追い風にして、「汚染水は危険だ!」などという反対運動が「風評」を煽っているのだ、などと出まかせをいったりしています。
わたしは、政府の指示に基づいて東京電力が放射性汚染水の海洋放流を強行したことを、許すことはできません。あらためて、放射性汚染水について学びなおして、反対の意志をはっきりさせたいと思っています。
そこで、政府と東電が、安全基準と環境影響に問題がない、と言い張ることに対するアンチとして、以下の事実を紹介したいと思います。
世界最高の海洋研究所を率いる科学者たちは、「福島第一原子力発電所事故による130万トン以上の放射性汚染水を太平洋に放出する日本の計画に対して科学的に反対」と、中止をするよう呼び掛けました。
米国の100以上の研究所が加盟する全米海洋研究所協会(National Association of Marine Laboratories)は、昨年12月12日のNAML理事会にて採択された「声明」において、日本が福島第一原発の放射性汚染水を海洋放出する計画について、反対を表明したのです。
ここで注目すべきことは、この「声明」では、これまで日本側が「処理水」(treated water)と説明してきているものを、科学者たちは、「radioactively contaminated waste water」と表現していることです。「声明」では、福島第一原発事故による廃水を〝放射能に汚染された廃水〟と明確に表現していることです。
https://www.naml.org/policy/documents/2022-12-12%20Position%20Paper,%20Release%20of%20Radioactively%20Contaminated%20Water%20into%20the%20Ocean.pdf
「声明」は、「私たちは、各タンクの放射性核種含有量に関する重要なデータがないこと、放射性核種を除去するために使用される高度液体処理システム、そして汚染された廃水の放出に際して、〝希釈が汚染の解決策 〟という仮定を懸念している」、と明言しています。「各タンクの放射性核種含有量に関する重要なデータがない」ということは、逆に、放射性汚染水を海洋放出することへの懸念を示す重要なデータがあるにもかかわらず世に出せないデータがある、ということではないでしょうか。
そして、東電が明らかにしたデータに関して、「東京電力と日本政府が提供したデータは不十分であり、場合によっては不正確である。サンプリングプロトコル、統計デザイン、サンプル分析、仮定に欠陥があり、その結果、安全性の結論に欠陥が生じ、処分の代替手段をより徹底的に評価することができなくなるのである」といい、放射性汚染水の海洋放出の安全性を証明するものになっていない、というのです。日本による・海水でうすめれば安全という〝希釈が汚染の解決策 〟は、海洋科学者たちによって否定されました。
また、「放射性廃棄物を安全に封じ込め、貯蔵し、処分するという問題に対処するためのあらゆるアプローチが十分に検討されておらず、海洋投棄の代替案は、より詳細かつ広範な科学的厳密性をもって検討されるべきである」として、福島第一原発事故による「放射性廃棄物を安全に封じ込め、貯蔵し、処分するという問題」に対処する方法の検討が不十分であり、「海洋投棄」ありきであった、ということを批判しているのではないかと思います。
それゆえに、「私たちは日本政府に対し、前例のない放射能汚染水の太平洋への放出を中止し、海洋生物、人間の健康、そして生態学的・経済的・文化的に貴重な海洋資源に依存する地域社会を守るための他のアプローチを、より広い科学界と協力して追求するよう強く求めます」、と結んでいます。
この「声明」の主張は、誠にもっともなことである、とわたしは思います。
どのようなリスクが民を襲おうとも、自分たちは安全なところにいて、ベネフィットは我らのもの! 〝後は野となれ山となれ〟というようなことを行って、再度放射性汚染水の海洋投棄を繰り返そうという日本政府と東電を、わたしは絶対に許すことはできません。