ヒノキの森の案内人のページ

『資本論』に学びながら、世の中の矛盾について考えたことをつづっていきます。

★「人道支援促進決議」の骨抜き化

国連安保理が「人道支援促進決議」も、米に配慮して「停戦」文言欠く!
 
 国連安保理は、12月22日、パレスチナガザ地区人道支援を促進するために「即時に敵対行為の中止」(=即時停戦)の文言が抜けた「持続的な敵対行為の停止につながる条件の整備」を求める決議を採択しました。理事国15ヵ国のうち日本を含む13ヵ国が賛成し、米国とロシアは棄権しました。
 当初、アラブ首長国連邦が作成した決議案にはこの内容が含まれていましたが、イスラエルを擁護し、停戦を支持しない米国が拒否権を行使するのを回避するために、米国が受け入れやすい文言の修正を重ね、採決は当初の予定より4日も延期されたとのこと。
 その結果、ハマスについての言及はせず、すべての人質の即時かつ無条件の解放を訴えたものとなり、「敵対行為の停止」や支援物資搬入をめぐる国連の権限拡大などを呼びかけた当初の草案から内容は大きく後退しました。ガザ地区状況に対する「重大な懸念」と共に、大規模な人道支援の許容と促進▽民間人の保護▽無条件での人質解放▽救援物品の監視と配布を担当する国連調整官の任命などの要求だけが盛り込まれた形になってしまいました。
 米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は、拒否権は行使しなかったものの、「決議」にはハマスへの直接的な批判がないとして、棄権しました。ガザ地区で即時停戦が行われるべきだという国際社会の世論に、米国が再び単独で対抗し、イスラエル・ネタニヤフ政権支援の側に立ったわけです。
 一方、ロシアのネペンジャ国連大使は、米国への配慮で内容を後退させた決議は「安保理にとって悲劇」であると批判し、「敵対行為の停止」の文言を復活させる修正案を提出しました。これには、10ヵ国の賛成を得ましたが、米国が当然にも拒否権を行使し、否決されました。
 さて、この「決議」の採択をめぐっての現実を観るや、なんとも国連の欺瞞性が明らかではありませんか。グテーレス事務総長が国連憲章第99条に基づき「人道的大惨事の回避」を求めた際にも「停戦」決議が採決されないばかりか、パレスチナの労働者・人民に対して非道極まりないジェノサイドを行っているイスラエルを支援する米国に対して、今日のガザの惨状を知りつつもまだ配慮する、そのような米国の主張する「人道」なるものがいかに欺瞞的であるかが、いや益々明確になったと言えると思います。さらに、国連安保理で「人道支援」決議が採択されたからといって、問題は解決しないと思います。
 
 *UAEのヌセイベ国連大使は、「(内容は)完璧ではない。この苦しみを終わらせることができるのは停戦だけだ」、と記者団に語っていたそうです。

 ハマスイスラエルは、当然にも、それぞれ安保理決議に反発しました。
ハマスは、「米国が決議案の本質を取り除き、中身を伴わないものにするために努力した結果」だと非難しました。そして、この「決議」に対して、ガザ地区の「壊滅的な状況」を解決するには「不十分だ」とする声明を発表しました。「声明」は、「決議」に停戦を求める文言が入っていない点が問題だと指摘し、「米国が決議案を骨抜きにしようとしてきた」と非難。そのうえで「ガザ地区北部を含む全域に十分な量の支援を行き渡らせるのは安保理の義務だ」と主張。
 イスラエルは、「決議案は不要であり、国連が紛争に肯定的な役割を果たせないことを証明したもの」だと主張。

このことを受けて、米国とイスラエルの首脳の電話協議が行われました。バイデン大統領が「民間人を保護しなければならない重大な必要性を強調した」としたのに対し、ネタニヤフ首相は、「戦争の目的(=ハマス壊滅)を達成するまでイスラエルが戦争を続けるという意思を明確にした」と語ったとのことです。
 戦時内閣のガラント国防相ガンツ前国防相は23日、そろってガザ地区北部を訪問。ガラント国防相は、「銃撃やロケット発射、テロの温床となっている建物は全て破壊されなければならない」と主張。ハマスガザ地区最高指導者シンワル氏らについて「彼らはここでハマス部隊がどう終わりを迎えたのか分かっている。イスラエルを攻撃した者は代償を払わせ、壊滅する」と述べ、ハマス指導部を標的にする姿勢を鮮明にしました。
 国連安保理決議直後の両首脳の電話会談をみると、ネタニヤフ政権が国連の「決議」など眼中にないことがよくわかります。しかも、バイデン大統領の「民間人を保護しなければならない」という発言に対しても、まるで聞く耳持たない態度を示しています。
 わたしたちは、ネタニヤフ政権を打倒して、即時停戦を訴える世界の労働者と連帯していく必要がある、と思います。
 

 即時停戦! イスラエル政権のパレスチナ住民たちへのジェノサイド弾劾!
 全世界の労働者・人民は、民族対立および宗教対立をのりこえて連帯し、イスラエル政権の蛮行を許さず、ハマスの軍事行動も止めよう! 
 自国政府のイスラエル支持に反対しよう!
 欧米権力者によるイスラエル支援を弾劾しよう!
 イスラエルの労働者・人民は、シオニズムの呪縛を解き放ち、ネタニヤフ政権を打倒せよ!!