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『資本論』に学びながら、世の中の矛盾について考えたことをつづっていきます。

マスコミが一斉に報じた春闘・労使トップ会談の〝労使で一致〝という表現! ――そこに現われた「連合」指導部の労資協調主義

 1月22日、「連合」・芳野会長と経団連・十倉会長が、2025春闘に向けて労使トップ会談を行いました。

 マスコミは、口を合わせたように、「賃上げ拡大」「労使一致」と報じました。会談の特徴は、労使が協調して賃金の底上げを図る姿勢を示した、ということです。

 会談後、「連合」・芳野会長は、「労使で考え方は同じ方向を向いている」と発言しました。「同じ方向を向いている」とは、「賃上げ実現に向け価格転嫁や適正価格の推進、健全な労使関係の重要性を共有した」、ということです。

 なるほど、「連合」指導部と経団連とは、「同じ方向を向いている」と言えます。「連合」会長は、物価上昇分を上回る賃上げを実現するために、原材料費のみならず人件費の上昇分を上乗せする〝価格転嫁〝の必要性を経団連会長と改めて確認した、ということです。そして、両者は、物価高の中で喘ぐ労働者に「良いモノやサービスには値が付く」という価値観を浸透させ、価格転嫁した分高額になった商品を買うことを強制しているのです。

 「今年は、賃金と物価の好循環が確信できる年にしたい」と意気込む経団連会長は、しかし、問題意識は「連合」と共有するとしたうえで、中小の要求水準(6%以上)は「極めて高い水準と言わざるを得ない」と釘を刺しました。この中小の賃上げ要求を6%以上とすることは、「健全な労使関係」とはいえない、と言っているように思います。

 このことは、『経営労働政策特別委員会報告』2025年版では、「しかし、その目標は、建設的で健全な労使関係・労使交渉の促進に資する水準である必要がある。」(pp.121~122)と批判しています。そして、脚注(p.122)において、『2025連合白書』に「さらなる組織拡大と健全な労使関係・労使交渉を進める」と書いてあるじゃないか――と更なるダメ押しをされているのです。こんな高率の賃上げ目標を掲げていては、「健全な労使関係の重要性を共有した」とは言えないじゃないか! と「連合」指導部は、経団連から叱責されているのです。

 経団連・十倉会長は、2025年を賃金引き上げの力強いモメンタムの社会全体への「定着」の年にしよう、と発言しています。このことの意味は、昨年の集計を参考にせよ、ということです。2024年の「連合」春闘春季生活闘争)では、大企業の月例賃金引き上げ率は5.10%、中小企業では4.58%でした。経団連の集計では、大手企業の月例賃金引き上げ率は5.58%、中小企業では4.01%でした。これを参考にして「賃金・処遇決定の大原則」にのっとって考えれば、大企業の「5%以上」はわかるが、中小の〝6%以上〝という数字が「極めて高い」ことがわかるだろう、ということなのです。

 しかし、これに対して「連合」指導部は、何ら反論する気などはありません。なぜなら、中小企業の労組からの突き上げをかわすために〝6%以上〝などと目標設定したのだからです。(*下線は、筆者による)

 

「賃金・処遇決定の大原則」とは 👇

①社内外の様々な考慮要素(経済・景気・物価の動向、自社の業績や労務構成の変化など)を総合的に勘案し、

②適切な総額人件費(企業が社員を雇用するために負担する費用の総和)管理の下で、

③自社の支払い能力を踏まえ、

④労使協議を経た上で、各企業が自社の賃金を決定する大原則のこと

(『経営労働政策特別委員会報告』2025年版 p.124 脚注)

                (2025.01.25)